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 香川共同リポジトリは、香川県内で生産された学術研究成果を電子的に収集、整 理、保存し、インターネットを通じて無償で提供することを目的として公開して います。

*平成23年度国立情報学研究所最先端学術情報基盤(CSI)構築推進委託事業です。

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全学共通教育の平成28年度実施に向けた研修会(FD)報告 大学教育基盤センター調査研究部 ダイガク キョウイク キバン センター チョウサ ケンキュウブ
 例年、この研修会は、主に次年度に全学共通教育科目を担当する先生方に出席をお願いしているが、今回は、今後数年間で全学共通教育カリキュラムが大きく変化すること、また、その変化による各部局への影響が予想されるため、全ての教員へ出席をお願いした。第1部「全般的課題」では、全学共通教育の改革の方向性や、具体的な新カリキュラムの内容について説明が行われた。続く第2部「分科会」では、授業担当者を中心に4つの分科会に分かれて、より具体的な討論と情報交換を行った。 日時:平成27年12月8日(火)13:30 ─ 16:50 場所:教育学部415講義室ほか 対象:全教員 第1部 全般的課題 1.全学共通教育の改革について 2.全学共通教育の新カリキュラムについて 3.新カリキュラムのうち平成28年度実施分について 4.全学共通教育事務手続きについて 第2部 分科会(*既修外国語分科会は別途実施、主題A分科会は担当者会議で代替。) A.主題科目「主題B」分科会 B.学問基礎科目分科会 C.コミュニケーション科目「大学入門ゼミ」分科会 D.コミュニケーション科目「情報リテラシー」分科会  以下、当日の提題者と記録者が中心となって報告を作成し、研修会の企画・実施にも当たった大学教育基盤センター調査研究部が編集作業を行った。 【大学教育基盤センター調査研究部より】石井知彦(調査研究部長/工学部)、葛城浩一(共通教育コーディネーター/大学教育基盤センター)、佐藤慶太(同)、西本佳代(同)、斉藤和也(共通教育コーディネーター/経済学部)、鶴町徳昭(共通教育コーディネーター/工学部)、林敏浩(共通教育コーディネーター・総合情報センター) 【その他の執筆者】藤井宏史(教育担当理事/大学教育基盤センター長)、高橋尚志(大学教育基盤センター副センター長/共通教育部長/教育学部)長井克己(大学教育基盤センター)、石井さおり(修学支援グループ)

小テストのためのちょっとした工夫 岩本 直樹 IWAMOTO Naoki
要旨  試験による成績評価は授業科目に付き物である。1学期間の試験頻度として期末試験1回のみでは試験範囲が広く、また一発勝負になる。そこで、毎週の小テストのようなものが勉学を促す意味でも、学生の理解度を知る上でも役に立つ。一方、試験頻度が増えると教員にとって問題作成、採点などの負担が増えることとなる。本稿では、その負担をできるだけ減らせるように択一式試験問題についていくつかの工夫について述べる。 1.はじめに  いまさら択一式試験方法の功罪は論じないこととする。様々な試験方法の中で択一式は採点のやりやすさが最大の利点であろう。実際、大学入試センター試験でも各科目で多用されている。択一式は回数を多く行う試験には費用対効果という点で有効な方法であると思われる。

平成27年度「大学入門ゼミ」実施報告 佐藤 慶太 SATO Keita 松下 幸司 MATSUSHITA Koji 三宅 岳史 MIYAKE Takeshi 佐川 友佳子 SAGAWA Yukako 持田 めぐみ MOCHIDA Megumi 宮下 信泉 MIYASHITA Nobumoto 宮川 勇人 MIYAGAWA Hayato 末吉 紀行 SUEYOSHI Noriyuki
 本稿は、平成27年度「大学入門ゼミ」の実施状況報告である。「大学入門ゼミ」立ち上げの経緯、および過去4年の実施状況については、佐藤(2011)、佐藤ほか(2012、2013、2014、2015)を参照されたい。まず本年度の大学教育基盤センター(以下、大教センター)の取り組み内容、および本年度実施において特記すべき事項(第2節)を確認する。次いで各学部の実施状況を報告し(第3節)、これを踏まえた実施部会の議論をまとめる(第4節)。第3節を除く箇所の文責は、佐藤慶太が負う。

文系向け自然科学基礎実験の起ち上げ 高橋 尚志 TAKAHASHI Naoshi 鶴町 徳昭 TSURUMACHI Noriaki 岡田 宏基 OKADA Hiroki 中村 丈洋 NAKAMURA Takehiro
1.背景-香川大学生の学びの実態  香川大学での全学共通教育は、全学出動体制の下、大学教育基盤センターが全学共通科目として開講している。その中には、本学の特色ある教育科目である主題科目があり、また、ディシプリン科目の学問基礎科目も数多く開講されている。他に大学入門ゼミ、情報リテラシー、健康スポーツに語学を加え、大学初年次教育を担っている。学生は、それらの科目のうち、特に主題科目と学問基礎科目については、あわせて一定以上の単位を取得することが卒業要件として課せられており、学部によって多少の違いはあるものの、10単位分を超えて学修する。主題科目については、担当する教員により、より文系的であったり逆に理系的であったりするが、幅広い主題での課題発見力および解決力を涵養する科目であるためバランス良い学びを保証するものであると考える。一方、学問基礎科目は、いわば学問そのものであるので極めてその特徴が現れる。そして、ここが問題なのだが、学生は主題科目で一定単位を取ると、残るは最低条件である6単位乃至4単位を学問基礎科目で取れば良い、ということになる。例を示そう。本学でもご多分に漏れず最近心理学が大変人気で、それはそれで喜ばしいことでもあるのだが、ある学部の学問基礎科目のミニマムの要件が4単位であり、その学部の7割近い学生が心理学を2科目4単位取っているという実態が調べてみると明らかになった。彼らは、学問基礎科目のノルマは果たしたので、特別な事情が無い限りもうそれ以上他を履修することはない。このようなゆがみは、教員の間ではうすうす感じられていたのだが、改めて調査したところ、文系学部(教育、法、経済の各学部とする)の学生は文系科目のみを、理系学部(医、工、農の各学部とする)の学生は反対に理系科目のみを履修する傾向が明らかになった(寺尾ら、2014、27-41頁)。この改善を図るのが、平成28年度から実施する全学共通教育カリキュラム改革の柱の一つになっている。 2.実験授業の構想とプロジェクトチームの発足  そういった中、大学教育基盤センター共通教育部では全学共通教育カリキュラムの改革の具体策の一つとして、文系学生が受講しうる自然科学の学問基礎科目の調査および試行を、平成26年度の学長裁量経費を取得し検討することになった。背景には、学問基礎科目を文系学生に是非受講してもらいたいという我々の希望はあるものの、実際開講されている自然系の学問基礎科目の多くは、現状では各学部の専門準備科目的な色彩が濃い面があり、そのまま文系学生を大量に受け入れることは困難であるということがある。また、いわゆる座学を配置したところで、“お話”を聞かせるだけで実のある学びを保証する事はまた困難であることもある。さらに、担当者については、医工農学部の遠隔地から教員を大量に定期的に確保することにも困難が当然ある。これらの困難をまとめて克服するための方策として、手を動かしながら“お話”だけではない「自然科学の地平の先端」を文系学生に実感をもって触れてもらう、実験を中心にした科目を構想した。人的確保の問題も、個々の教員にとっては、例えば1セメスターの間に2回ほど幸町キャンパスの実験室に出動すれば良いことになる。これにより、学部や大学院あるいは病院等での業務のために、普段多くの時間を全学共通に割くことのできない教員も、この授業には充分に貢献していただく事ができるであろうということもねらいの一つに加えた。  一方、大学教育基盤センター調査研究部でも初めはまったくの独立に、21世紀型市民が必要とする自然科学リテラシーを構想するに当たり、その中心を実験と捉え、理科系学生は専門学部で充分に実験に触れる機会があるので、ここでは特に文系向けに、自然科学の実験を課すことを構想した(石井ら、2015、1-60頁)。現代社会は、実験を基礎にした実証科学の成果である科学技術の果実の上に成り立っており、現代を生きる市民は望むと望まぬとに関わらず、その影響下にある。本学の学生は少なくともその基礎的な部分については身をもって知っているようにしようというのがねらいである。センターでは奇しくも同時期に生まれた同様の構想を統合し、具体化を企画構想し試行を目指すプロジェクトチーム(PT)を発足させた。PTメンバーは、高橋(教育)、鶴町(工)、岡田(医)、中村(医)である。後にこのPTは調査研究部の理系メンバー(石井(工)、山田(農))を加え、さらに強化することになる。  ここで、他大学の状況に触れておこう。理科系の学生向けに、必修の共通教育として自然科学の実験を取り組んでいる東北大学の例(須藤、2005、83-93頁)が先進的であり、その規模は大きく、また10年の歴史を持つ。一方文系向けとなると、とたんに見当たらなくなり、同じく東北大学が選択科目として実施しているもの(須藤、2009、187-198頁)があるのみで、全学で必修化しているというものはない。

ボーダーフリー大学の量的規模に関する基礎的研究 葛城 浩一 KUZUKI Koichi 宇田 響 UDA Hibiki
 「ボーダーフリー大学」とは「受験すれば必ず合格するような大学、すなわち、事実上の全入状態にある大学」のことである。ボーダーフリー大学に相当するであろう定員割れを抱えた大学は、私立大学全体の5割近くに達しており、定員充足率50%未満の大学は5%を超えることもある(日本私立学校振興・共済事業団広報、2012)。定員割れの結果、募集停止の判断を迫られる大学も少なくなく、これまでに12大学が募集停止に至っている。18歳人口が減少に転じる2018年以降、定員割れの深刻な大学や募集停止の判断を迫られる大学は急増していくものと考えられる。  こうしたボーダーフリー大学は、入試による選抜機能が働かないため、基礎学力や学習習慣、学習への動機づけの欠如といった、早ければ小学校段階から先送りされてきた学習面での問題を有する学生を多く受け入れている。そのため、そこには日本の高等教育(特に大学)が抱えている問題が凝縮されて顕在化していると考えられる。今後の日本の高等教育のあり方を考える上でも、ボーダーフリー大学を研究対象とすることは非常に重要であるといえるだろう。  しかし、ボーダーフリー大学が研究対象とされることはこれまでほとんどなかった。なぜなら、山田(2009)も指摘するように、「(日本の)大学研究の視点は、旧来のエリート大学、すなわち現在の研究大学を中心にしたもの」(山田、2009、33頁、括弧内は筆者による)だからである。そのため、ボーダーフリー大学については研究蓄積が十分でないだけでなく、基礎的情報すら十分に整理されていない状態にある。すなわち、ボーダーフリー大学に所属する学生や教員の量的規模すら明確には把握されていないのである。  そこで本稿では、定員充足率や偏差値を手がかりとして、ボーダーフリー大学及びそこに所属する学生や教員の量的規模に関する基礎的情報を整理したい。それらを通して、今後のボーダーフリー大学研究に資する基礎的知見を提供したいと考える。

英語カリキュラムに関するアンケート調査 長井 克己 NAGAI Katsumi
 英語によるコミュニケーション能力の育成を教育目標として香川大学の全学共通英語科目で開講しているCommunicative English Ⅰ / Ⅱ / Ⅲ / Ⅳが適切に機能しているかどうかを検証する目的で、毎年学生及び教員にアンケートを依頼している。本稿は2015年度調査の結果を報告する。

平成27年度における学問基礎科目相関図の効果検証 斉藤 和也 SAITO Kazunari 中村 丈洋 NAKAMURA Takehiro 鶴町 徳昭 TSURUMACHI Noriaki 三宅 岳史 MIYAKE Takeshi 佐藤 慶太 SATO Keita
 調査研究部では、新入生が授業に対して幅広い関心を持ち、授業科目相互の関連性について意識を持った上で受講登録を行うためのツールとして「学問基礎科目相関図」を作成し、平成25年度のシラバスにこれを掲載した。相関図に関して、平成25年度に、「相関図の認知度」を主眼とした調査を行ったが、これに加えて、「学問基礎科目相互の関連性の理解度」や「授業相互の関連付けの意識度」が「相関図の認知度」とどの程度の相関があるかということについても調査を行った。その結果、相関図の果たす一定の役割を確認することができた。また、「相関図の認知度」を高めるための方策に関する提起も行った。このことについては、平成26年度の調査により、認知度を許容レベルにまで引き上げることができたことが確認された。本年度は、このことを受けて、「相関図は認知しているが参考にはしていない学生層」に対してその理由を回答させ、参考度のレベルを引き上げるための方策を考えるデータを得ることにした。  また、平成26年度に引き続き、共通教育スタンダードの認知度についても昨年度と同様の調査を実施した。さらに、平成26年度から開始したリーディングリストの利用状況についても調査を行った。本論は、これら3つの事項について行ったアンケート調査の結果を分析したものである。

医学部における高校生を対象としたブレンド型学習の試み 西屋 克己 NISHIYA Katsumi 住谷 和則 SUMITANI Kazunori 岡田 宏基 OKADA Hiroki
 日本の医学部では伝統的な知識の伝達を主体とする一方向的な講義形式が明治以来カリキュラムに取り入れられてきた。しかし、この講義形式では学生は受動的であり、問題解決能力の育成は難しく、ひたすら知識の暗記を促すものとなった。この反省から、わが国では、これまでの講義に加えて学生の能動的な学びを目指すPBL(Problem-based learning:問題基盤型学習)が導入されるようになった。1969年にMcMaster大学にPBLが導入され、1986年にHarvard大学がHarvard Medical Schoolの独自の取り組みである『New Pathway』プログラムとしてPBLを本格的にカリキュラムに採用したことにより世界の医学部にひろまった(鈴木、2012、44-48頁)。医学部におけるPBLは、症例シナリオを用いて、そこから問題点を抽出し、その問題点を解決していく過程を通して臨床推論能力や問題解決能力を習得していくことを目的としている。2010年現在、日本の医学部の92.5%にPBLが導入されていると報告されている(鈴木、2012、44-48頁)。PBLを実施するためには、多くのチューターとしての教員や小教室が必要であることが問題となってきた。そこで、2010年頃から、TBL(Team-based learning:チーム基盤型学習)が日本の医学部に導入されるようになった。TBLとは、1970年代後半にOklahoma大学のLarry Michaelsenによって考案された教育方略である(Michaelsen, L.K., 2004)。TBLは大人数にも適したアクティブ・ラーニングの方略であり、1)予習:教員が指定した教材の学生による事前学習、2)講義における学生の予習準備確認:同一問題を個人テストおよびグループテストにより正解に到達するまで議論し、教員が適宜フィードバックを与える、3)講義における応用課題:1)2)の学習過程で得た基礎知識を活用してグループで応用課題に取り組む、の3ステップから構成される(三木、2011、20-23頁)。これらPBLやTBLなどの学生の能動的な学びはまさにアクティブ・ラーニングそのものであり、大学教育において医学部は早期からアクティブ・ラーニングに取り組んできたといえよう。  近年、日本の大学教育では、文部科学省中央教育審議会(中教審)による平成24年の答申において(文科省中教審答申、2012)学士課程教育の質的な転換が求められている。その中で『生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。』と述べられており、アクティブ・ラーニングの重要性が指摘されている。また、この流れは初等中等教育においても同様であり、平成26年の中教審の答申において(文科省中教審答申、2014)、『「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろんのこと、「どのように学ぶか」という、学びの質や深まりを重視することが必要であり、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や、そのための指導の方法等を充実させていく必要がある。』と述べられている。このように初等教育から高等教育まで一貫したアクティブ・ラーニングを軸とした教育が求められている。特に、この中で高大接続を重要視した高等学校や大学におけるアクティブ・ラーニングや入試改革を打ち出されている。今回、今後の高大接続を視座に入れた、医学部における高校生を対象としたブレンド型学習を実施した。ブレンド型学習はe-ラーニングと対面授業におけるアクティブ・ラーニングを合わせた授業形態である(重田、2014、677-684頁)。本稿では医学部における高校生を対象としたブレンド型学習の内容を示し、学習のレディネス、自己主導型学習といったアクティブ・ラーニングから得られる学びが身についているかについて、質問紙法による生徒の評価を行い、そこから得られた知見について若干の文献的考察を含めて報告する。

TOEIC得点と試験のない通常授業における語彙の保持率との相関 ─遅延条件下での測定結果と問題点─ 木戸口 英樹 KIDOGUCHI Hideki スティーブ ヒル Stephen HILL
 現在多くの大学で、テキストを使用した英語の授業が多様な形態で実施されており、このような授業形態の効果に関する研究やテキストの開発は数多く行われてきている。しかしながら、近い将来のテストや試験を前提としない通常の授業において、ある単元が終了し相当の時間が経過した時点で、学習者がその単元のトピックの語彙や概念をどの程度保持しているのかという素朴な疑問に関しては、ほとんど興味や関心が向けられてこなかった。また、この疑問に答えられる先行研究もない。しかしながらこの疑問は、多くの教員が授業ごとに意識する問題であり、日常の授業の質や方法論が問われる問題でもある。この疑問はまた英語の場合、学習者の内部で生起する、あるトピックの語彙や概念が英語で構成される心的過程を検討する問題でもある。さらにこの疑問を検討することで、現在多くの大学で検討されている新たな学期制度を議論する上で、遅延時間を経た学生の実質的な学習効果や保持レベルを検討する基礎的なデータとなり得る。  通常、学習者は定期テスト等の試験が課されない限り、終了した単元の内容を意識的にリハーサルすることは、ほとんどないと考えられる。このようなリハーサルが行われない条件下における学習項目の保持メカニズムの検討は、同時に時間経過に伴う忘却のメカニズムの検討でもある(Wixted,2004)。学習した項目を想起する再生レベルは、記銘の強さや手がかりの数に応じて変化することが知られている(Tulving & Thompson, 1973; Craik & Tulving, 1975)。本稿では教員による授業の多様性やそれらの効果を論じるのではなく、そのような多様な授業を通してあるトピックが終了した時点で形成される語彙と概念、およびその保持メカニズムに焦点を当てた。  本稿では上記の目的を検討するための実験要因計画として、ある単元の終了後に何らかのタスクを課すことなく、次の単元に移行する場合(Session 1) と、単元の終了後に内容と語彙の整理を行うタスクを課した場合(Session 2) の2種類の実験的な形態を設けた。またテキストの内容レベルも、親しみのある内容の単元とそうでないもの2水準を設定した。そしてある単元が終了し相当の時間(3週間)が経過した時点で、学習者に該当の単元のトピックに関する語彙の再生を求めた。いずれの形態でも語彙再生が実施されることは、学習者には事前に知らされていなかった。本稿ではこのように、2種類の授業終了形態を設定し、学習者のトピックに関する語彙の保持レベルは、相当の遅延時間が経過した場合、現実的にはどのようなものなのかをトピックに関する学習者の再生語彙数を指標に、TOEICの得点およびテキストの親密度(難易度)を操作し検討した。今回の実験では、ある単元の学習に際し、学習者によって異なる英語の統語能力や読解力は、3週間という限定された通常授業の実験期間内では、学習者内で変化せず一定であると仮定し、要因計画の交絡因子とはみなさなかった。なお本稿では通常の授業の一定期間を設定し、 その期間に実施された通常の授業を実験、 学生を参加者(学習者)と称した。

香川大学1年生の問題行動の実態 ─コンプライアンス教育のための実態把握─ 大久保 智生 OKUBO Tomoo 西本 佳代 NISHIMOTO Kayo
 本研究の目的は、香川大学1年生の問題行動の実態を明らかにし、その結果をもとにコンプライアンス教育の在り方について考察することにある。  近年、大学は不祥事対策としてコンプライアンス教育を強化しなければならない状況に立たされている。例えば、学生が犯罪などの不祥事を起こしたのなら、大学はメディアを通して謝罪し、不祥事対策を講じ、それを発信しなければならない。抑止のしようがない問題の対策を講じることの是非はともかくとして、その一連の流れが「誠意ある対応」としてみなされていることは間違いないだろう。確かに、大学は公的な機関であるし、特に香川大学のような地方国立大学においては地域に対する説明責任が生じている。また、2008年に中央教育審議会が示した「学士力」の構成要素には「市民としての社会的責任」や「倫理観」が挙げられており、社会が大学に期待する教育の一環としてコンプライアンス教育が位置づけられているといっても過言ではない。加えて、不祥事に関わることのない大多数の在学生の心情を想像すれば、同じ大学から犯罪者を出さないための手段を講じることが大学の役割の一つのようにも思える。  その一方、大学においてこの問題を論じるのであれば、こうした社会的要請がある種のモラルパニックの中で生じているということにも自覚的でなければならないだろう。モラルパニックとは、「社会一般に受容されている文化や規範に挑戦したり、逸脱したりする人々を、社会の秩序や公共の利益を脅かすものとしてやり玉にあげ、冷笑・避難・憎悪・激怒を一斉に浴びせる標的に仕立て上げてしまうヒステリックな大衆心理現象」(盛岡・塩原・本間編、1993、1427頁)のことを指す。罪を犯した学生やその学生が在籍する大学が危険視され、メディアの媒介によって社会不安となる。コンプライアンス教育はその社会不安を解消する「特効薬」として期待を集めるのである。  しかし、簡単には「特効薬」は見つからない。そうなった時、行き場のない思いが罪を犯した者やその者が所属する集団の排斥を引き起こしかねない。ジョックヤングは、1960年代後半以降、欧米社会は「安定的で同質的な包摂型社会から、変動と分断を推し進める排除型社会へ」(11頁)移行したと指摘する。排除型社会では、存在論的不安を背景に他者を悪魔に仕立てあげ、社会問題の責任をなすりつける「他者の悪魔化」がおこなわれる。もちろんこれは欧米の話だが、非正規雇用の拡大や失業者の増加等日本にあてはまることが多く、日本もまた排除型社会だとされる。本研究にひきつけてみると、罪を犯した学生やその学生が在籍する大学が危険視され、その解消のために「特効薬」としてコンプライアンス教育が求められる。しかし、簡単には「特効薬」は見つからず、結果として、危険視される学生や大学は「悪魔」として排除される可能性がある。大学におけるコンプライアンス教育について論じるのであれば、こうした問題が付随していることを忘れてはならないし、間違っても「他者の悪魔化」を助長する方向に学生たちを導いてはならないだろう。先のストーリーを意識的にずらして、つまり、問題の原因を個人や一部の集団の異常性に見出し、それを排除するのではなく、社会的構造を含めた広い視野で問題の本質を見極めながら、大学ですべきこと、できることを取捨選択する必要がある。こうした問題意識に立ちながら、本研究は、香川大学1年生の問題行動の実態を明らかにする。エビデンスにのっとった検討を進め、排除型社会に寄与しないコンプライアンス教育の在り方を考える一助としたい。

初年次教育「保職基礎演習」と2年間の総括としての「保育・教職実践演習」のFD的効果の分析―授業担当教員による設計注目して― 相馬 宗胤 出木浦 孝 山本 幾代 柴田 玲子 中村 多見 池内 裕二 岡谷 崇史 佐々木 利子


乳幼児期における仲間関係の発達-「保育内容 人間関係」における育ちあう保育の提案に向けて- 中村 多見


子どもの歌における表現のあり方に関する考察 柴田 玲子 出木浦 孝 西村 京子 渡辺 磨奈 徳山 眞矢


保育者養成機関として,学生の造形表現技術を高めるには-観察を通して技能向上へ- 岡谷 崇史


小学校理科おける安全指導 藤本 一郎


フランチャイズ展開と消費者評価との関係 日笠 倫周


実践教育に重きをおいた情報科教育法の報告 佃 昌道


幼児理解に基づいた保育の評価に関する考察 山田 純子


中1ギャップをふせぐための算数指導 ―小中連携の視点から― 福田 安伸


「家庭科指導法研究」における被服製作実習についての一考察 中村 真由美