ボーダーフリー大学教員の大学教授職に対する認識(5) ─先行研究で得られた知見との比較を中心に─
URI |
http://shark.lib.kagawa-u.ac.jp/kuir/metadata/27979 |
タイトル |
ボーダーフリー大学教員の大学教授職に対する認識(5) ─先行研究で得られた知見との比較を中心に─
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タイトル(別表記) |
Recognition of the Academic Profession by Faculty Who belong Low-prestige Universities: -A Comparison With Previous Study Results-
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ファイル |
AA1197154X_12_91_103.pdf
( 635.0 KB )
公開日
:2018-01-04
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内容記述 |
今日、大学教授職は大学を取り巻く環境の変化によって、その使命・役割・機能の再構築の問題に直面している。特に「研究大学」を頂点にした階層の底辺に位置する「ボーダーフリー大学」と呼ばれる大学(本稿では、「受験すれば必ず合格するような大学、すなわち、事実上の全入状態にある大学」と定義する)では、こうした傾向が強くみられる。ボーダーフリー大学では入試による選抜機能が働かないために、そこに所属する教員(以下、ボーダーフリー大学教員と表記)は、多様な学生、特に基礎学力や学習習慣、学習への動機づけが欠如した学習面での課題を抱える学生への対応に追われることになる。 本来、大学教授職に期待される主要な役割は「教育」と「研究」である。それにもかかわらず、ボーダーフリー大学では教育に対する期待が非常に大きいため、研究を表立って行うことが憚られる状況にすらある。教員自身が描く大学教授職に対するイメージと、周囲から期待されるそれとのギャップに苦悩する教員も少なくない。こうした意味において、ボーダーフリー大学はその他の大学に比べ、大学教授職の使命・役割・機能の再構築の問題に絶えず晒されてきたといっても過言ではない。 このように、ボーダーフリー大学における大学教授職の使命・役割・機能の再構築の問題は非常に重要な問題であるが、そこに焦点を当てた研究は筆者を除けば皆無である。そもそも、ボーダーフリー大学自体、これまで研究対象として扱われることはほとんどなかった。なぜなら、山田(2009)も指摘するように、「(日本の)大学研究の視点は、旧来のエリート大学、すなわち現在の研究大学を中心にしたもの」(山田、2009、33頁、なお括弧内は筆者による)であり、大学及び大学教員の多様性があまり考慮されてこなかったからである。 大学教授職に関する先行調査・研究もその例外ではない。例えば、有本章を研究代表者とする研究プロジェクトチームによる「大学教授職の変容に関する国際調査」(2007)は、入試難易度の高い基幹大学を中心に行われたものであったため、大学及び大学教員の多様性という点では課題の残る調査であった。すなわち、難易度の低い大学に所属する教員のサンプル数が十分でなかったため(入試時の偏差値3)(以下、偏差値と表記)で50未満という設定でも200名に満たなかった)、難易度間比較を十分には行うことができなかった。また、難易度間比較を行う際に、専門分野の特性によって回答状況に差異が生じることが予想されたものの、それを考慮した分析まで踏み込むことができなかった。 こうした課題の克服も視野に入れて設計されたのが、同じ研究プロジェクトチームによる「大学教授職に関する意識調査」(2010)である。この調査では、偏差値65以上の大学と45 以下の大学を対象とし、専門分野(文系、理系)を考慮した上でサンプリングを行っており、後者の大学だけで400名を超えるサンプル数が確保されている。しかし、この調査は「大学教授職に関する有識者調査」(2008)との比較を主目的として設計されたものであるため、分析に使用できる項目には限界があった。 そこで、ボーダーフリー大学教員の大学教授職に対する認識を明らかにすることを主目的として設計されたのが、本稿で用いる「大学大衆化時代における大学・大学教授職のあり方に関する調査」である。この調査では、偏差値45以下の大学を対象とし、専門分野(社会科学系、理・工学系)を考慮した上でサンプリングを行っており、サンプル数を確保するために質問項目を厳選したこともあっ てか、800名を超えるサンプル数が確保されている。なお、上記の先行調査に比べれば、サンプルの代表性も高い。 この調査で得られたサンプルに基づき、本稿では、ボーダーフリー大学教員の大学教授職に対する認識を明らかにするための基礎的分析として、大学教授職に期待される主要な役割である「教育」と「研究」に焦点を当てた分析を行う。すなわち、ボーダーフリー大学教員の教育・研究活動に対する意識がどのようなものなのか、教育・研究に対する関心、教育・研究活動等の実態、現在の教育・研究活動等に対する認識といった観点から、上記の先行調査に基づく先行研究で得られた知見との比較を中心に明らかにしたいと考える
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著者 |
著者 |
葛城 浩一 |
著者(ヨミ) |
クズキ コウイチ |
著者(別表記) |
KUZUKI Koichi |
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掲載誌 |
香川大学教育研究
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掲載誌(別表記) |
JOURNAL OF RESEARCH IN HIGHER EDUCATION KAGAWA UNIVERSITY
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巻 |
12
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開始ページ |
91
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終了ページ |
103
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出版者 |
香川大学大学教育基盤センター
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出版者(別表記) |
Higher Education Center,Kagawa University
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出版年月日 |
2015-7
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ISSN |
1349-0001
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NCID |
AA1197154X
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資料タイプ |
紀要論文
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言語 |
日本語
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版 |
出版社版
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区分 |
香川大学
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