文系向け自然科学基礎実験の起ち上げ

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タイトル
文系向け自然科学基礎実験の起ち上げ
タイトル(別表記)
The Design of Natural Science Experiments for Non-Science Course Students
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内容記述

1.背景-香川大学生の学びの実態

 香川大学での全学共通教育は、全学出動体制の下、大学教育基盤センターが全学共通科目として開講している。その中には、本学の特色ある教育科目である主題科目があり、また、ディシプリン科目の学問基礎科目も数多く開講されている。他に大学入門ゼミ、情報リテラシー、健康スポーツに語学を加え、大学初年次教育を担っている。学生は、それらの科目のうち、特に主題科目と学問基礎科目については、あわせて一定以上の単位を取得することが卒業要件として課せられており、学部によって多少の違いはあるものの、10単位分を超えて学修する。主題科目については、担当する教員により、より文系的であったり逆に理系的であったりするが、幅広い主題での課題発見力および解決力を涵養する科目であるためバランス良い学びを保証するものであると考える。一方、学問基礎科目は、いわば学問そのものであるので極めてその特徴が現れる。そして、ここが問題なのだが、学生は主題科目で一定単位を取ると、残るは最低条件である6単位乃至4単位を学問基礎科目で取れば良い、ということになる。例を示そう。本学でもご多分に漏れず最近心理学が大変人気で、それはそれで喜ばしいことでもあるのだが、ある学部の学問基礎科目のミニマムの要件が4単位であり、その学部の7割近い学生が心理学を2科目4単位取っているという実態が調べてみると明らかになった。彼らは、学問基礎科目のノルマは果たしたので、特別な事情が無い限りもうそれ以上他を履修することはない。このようなゆがみは、教員の間ではうすうす感じられていたのだが、改めて調査したところ、文系学部(教育、法、経済の各学部とする)の学生は文系科目のみを、理系学部(医、工、農の各学部とする)の学生は反対に理系科目のみを履修する傾向が明らかになった(寺尾ら、2014、27-41頁)。この改善を図るのが、平成28年度から実施する全学共通教育カリキュラム改革の柱の一つになっている。

2.実験授業の構想とプロジェクトチームの発足

 そういった中、大学教育基盤センター共通教育部では全学共通教育カリキュラムの改革の具体策の一つとして、文系学生が受講しうる自然科学の学問基礎科目の調査および試行を、平成26年度の学長裁量経費を取得し検討することになった。背景には、学問基礎科目を文系学生に是非受講してもらいたいという我々の希望はあるものの、実際開講されている自然系の学問基礎科目の多くは、現状では各学部の専門準備科目的な色彩が濃い面があり、そのまま文系学生を大量に受け入れることは困難であるということがある。また、いわゆる座学を配置したところで、“お話”を聞かせるだけで実のある学びを保証する事はまた困難であることもある。さらに、担当者については、医工農学部の遠隔地から教員を大量に定期的に確保することにも困難が当然ある。これらの困難をまとめて克服するための方策として、手を動かしながら“お話”だけではない「自然科学の地平の先端」を文系学生に実感をもって触れてもらう、実験を中心にした科目を構想した。人的確保の問題も、個々の教員にとっては、例えば1セメスターの間に2回ほど幸町キャンパスの実験室に出動すれば良いことになる。これにより、学部や大学院あるいは病院等での業務のために、普段多くの時間を全学共通に割くことのできない教員も、この授業には充分に貢献していただく事ができるであろうということもねらいの一つに加えた。
 一方、大学教育基盤センター調査研究部でも初めはまったくの独立に、21世紀型市民が必要とする自然科学リテラシーを構想するに当たり、その中心を実験と捉え、理科系学生は専門学部で充分に実験に触れる機会があるので、ここでは特に文系向けに、自然科学の実験を課すことを構想した(石井ら、2015、1-60頁)。現代社会は、実験を基礎にした実証科学の成果である科学技術の果実の上に成り立っており、現代を生きる市民は望むと望まぬとに関わらず、その影響下にある。本学の学生は少なくともその基礎的な部分については身をもって知っているようにしようというのがねらいである。センターでは奇しくも同時期に生まれた同様の構想を統合し、具体化を企画構想し試行を目指すプロジェクトチーム(PT)を発足させた。PTメンバーは、高橋(教育)、鶴町(工)、岡田(医)、中村(医)である。後にこのPTは調査研究部の理系メンバー(石井(工)、山田(農))を加え、さらに強化することになる。
 ここで、他大学の状況に触れておこう。理科系の学生向けに、必修の共通教育として自然科学の実験を取り組んでいる東北大学の例(須藤、2005、83-93頁)が先進的であり、その規模は大きく、また10年の歴史を持つ。一方文系向けとなると、とたんに見当たらなくなり、同じく東北大学が選択科目として実施しているもの(須藤、2009、187-198頁)があるのみで、全学で必修化しているというものはない。

著者
著者 高橋 尚志
著者(ヨミ) タカハシ ナオシ
著者(別表記) TAKAHASHI Naoshi
著者 鶴町 徳昭
著者(ヨミ) ツルマチ ノリアキ
著者(別表記) TSURUMACHI Noriaki
著者 岡田 宏基
著者(ヨミ) オカダ ヒロキ
著者(別表記) OKADA Hiroki
著者 中村 丈洋
著者(ヨミ) ナカムラ タケヒロ
著者(別表記) NAKAMURA Takehiro
掲載誌
香川大学教育研究
掲載誌(別表記)
JOURNAL OF RESEARCH IN HIGHER EDUCATION KAGAWA UNIVERSITY
13
開始ページ
105
終了ページ
110
出版者
香川大学大学教育基盤センター
出版者(別表記)
Higher Education Center,Kagawa University
出版年月日
2016-3
ISSN
1349-0001
NCID
AA1197154X
資料タイプ
紀要論文
言語
日本語
出版社版
区分
香川大学
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