土質力学に基づく土塗壁の耐力評価手法の提案

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URI http://shark.lib.kagawa-u.ac.jp/kuir/metadata/28772
Title
土質力学に基づく土塗壁の耐力評価手法の提案
Title Alternative
Proposal on Strength Evaluation Method of Mud Wall Based on Soil Characteristics
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Description

要旨

土塗壁は竹などを格子状に組立てた下地に、粘土分を多く含んだ土を塗り重ねて造る壁である。土塗壁の材料は土、竹、藁等の自然材料で構成されており、環境への負荷も少ない。しかし、工期が長いことや耐震性能が低いと思われていることなどから、急速に土塗壁で住宅を建築されることが無くなっている。日本社会全体の高齢化に伴い、職人や壁土を供給する業者の廃業等も加速している。一方、国が進める「住宅の長寿命化」の観点から、耐力壁としての性能評価の見直しが行われ、2003年12月の建築基準法告示改正により壁倍率は従来の0.5倍に加え、新たに1.0倍と1.5倍が定められた。この告示に壁土の調合に関する一定の仕様は示されているものの、壁土の塗厚により壁倍率の評価を規定しており、壁土の強度特性は考慮されていない。土塗壁を壁土の強度特性を踏まえ工学的に評価するための定量的な方法が求められている。
本論文の先行研究として壁土のせん断破壊が卓越する土塗壁を対象とした耐力変形関係推定式の構築が宇都宮らにより提案されている。先行研究では壁土のせん断強度に影響を及ぼす強度定数の評価法と強度定数を精度よく評価する一軸圧縮試験について提案を行い、壁土の一軸圧縮試験結果から算定した強度定数を用いて、せん断破壊が卓越する土塗壁の耐力低下域となる1/15radまで推定可能な耐力変形推定式の提案を行っており、工学的な見地に立った評価方法が構築されている。
本論文は、土質力学的な手法に基づき壁土の強度及び変形性能を調整できる合理的な調合手法について言及している。宇都宮らの先行研究では、土壁の強度特性から土塗壁の耐力変形角推定する手法を提案しているが、その適用範囲はせん断破壊が卓越する1.75P以上の壁長さにのみに限られている。本論文では適用範囲を広げるために、土塗壁の形状が1.75P以下の破壊モードが曲げ破壊する耐力変形角推定の手法を提案する。さらに、新設の土塗壁だけでなく既存建物へも適応できる原位置採取試料を用いた土塗壁の強度推定手法の構築も提案している。本論文は7章で構成される。1章から6章の概略を以下に示す。
第1章「序論」では、土塗壁の歴史的背景や現状、既往の研究について述べるとともに、本論文の目的と構成について説明する。
2章「壁土の調合が強度特性に及ぼす影響」では、壁土の調合が強度特性に及ぼす影響を調べるため、さまざまな地域の壁土の強度特性と一軸圧縮強度の関係を調査した。これらの壁土から一軸圧縮強度の低い壁土に対して調合を変化させた場合の強度定数の評価を行い壁土の一軸圧縮強度の向上を検討する。香川県の壁土の配合を変化させた場合の強度特性に及ぼす影響も検討した。
「3章 せん断スパン比が土塗壁の破壊モードに及ぼす影響」では、宇都宮らの先行研究で、土壁の強度特性から土塗壁の耐力変形角推定する手法を提案しているが、その適用範囲はせん断破壊が卓越する2P壁長さの壁のみに限られている。本論文では適用範囲を広げるために、土塗壁の壁長さと壁高さの比率の異なる土塗り壁を5種類作成し、実大実験から破壊モードが変化する壁長さを実大実験と耐力変形角関係推定式から検証する。
「4章 せん断破壊が卓越しない土塗壁の耐力変形角推定式」では、3章の実験結果よりせん断破壊が卓越しない土塗壁の破壊モードを示す土塗壁に対して、材料種類や塗厚の異なる1P試験体の実大試験結果から耐力変形角推定式の理論式を構築し、検証を行った。
「5章 開口部を有する土塗壁の耐力変形推定式」では、実大実験での開口部の補強の有無、垂壁仕様と垂壁腰壁仕様の違いによる破壊性状から土質力学に基づき、垂壁や腰壁と柱に対してそれぞれ力学モデルを構築し、垂壁や腰壁を含む開口部を有する土塗壁架構の耐力変形推定式を提案し、推定式の妥当性を検討した。
「6章 原位置採取試料による壁土の強度特性評価手法の提案」では、原位置で採取した試料を用いた要素試験として直径60mmのコアを用いた一面せん断試験を行った。先行研究で提案されている一軸圧縮試験と比較を行い、一面せん断試験から壁土の強度定数である粘着力とせん断抵抗角をおおむね推定できることを確認した。
「7章 結論」では、本論文で得られた結論について説明する。本論文の研究結果から、壁土は調合を変えることで粘着力とせん断抵抗角の調整が出来る材料であること。土塗壁の壁長さや形状に応じた推定式を用いることで、新設の土塗壁の建物の耐力推定が可能となった。既存建物は、原位置採取試料を用いることで、耐力推定が可能となる。以上より、本研究は土質特性と破壊モードを考慮した新設及び既存の土塗壁の建築物の耐力変形関係の推定手法を構築した。

(工博乙6)

Author
著者 越智 隆行
著者(ヨミ) オチ タカユキ
著者(別表記) Ochi Takayuki
Resource Type
Thesis or Dissertation
Language
jpn
Text Version
ETD
Grant ID
博乙第6号
Grant Date
2019-03-24
Degree Name
博士(工学)
Grantor
香川大学
Set
香川大学
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