ボーダーフリー大学が直面する教育上の困難-授業中の逸脱行動に着目して-

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タイトル
ボーダーフリー大学が直面する教育上の困難-授業中の逸脱行動に着目して-
タイトル(別表記)
Problems in Education With Which “Border-Free Universities” Are Faced: A Report Focusing on Deviant Behaviors in Class
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内容記述

 日本における学生研究では、大学や学生の多様性がこれまであまり考慮されてこなかった。つまり、先行研究では、「多様な大学や大学生が一括して分析されることが多く、また個別大学の分析も、その結果が大学生全体に一般化される傾向にあった。とくに分析の中心になっていたのは都市部のかなり入学難易度が高い大学の学生、卒業生であり、その結果が現代の大学生像として一般化されることが多かった」(山田 2005、6頁)のである。
 しかし、日本の高等教育が既にユニバーサル段階にあることを考えれば、大学や学生の多様性は十分に考慮する必要がある。特に、入学難易度の低い大学、なかでも「ボーダーフリー大学」と呼ばれる大学を研究対象とすることは、今後の日本の高等教育のあり方を考える上で非常に重要であろう。なぜなら、こうした大学は、基礎学力や学習習慣、学習への動機づけの欠如といった、学習面での問題を抱える学生を多く受け入れており、より多くの教育上の困難に直面しているからである。
 なお、本稿では、「ボーダーフリー大学」を、「受験すれば必ず合格するような大学、すなわち、事実上の全入状態にある大学」と定義する。「ボーダーフリー大学」という用語自体は、そもそも河合塾による大学の格付けであり、通常の入学難易度がつけられない大学の意味で用いられている。本稿の定義に基づくボーダーフリー大学に相当する定員割れを抱えた大学は、2008年度には、私立大学全体の5割近く(47.1%)にまで達している(日本私立学校振興・共済事業団広報 2011)。
 さて、こうしたボーダーフリー大学を研究対象として、本稿が明らかにしたいと考えるのは、ボーダーフリー大学が直面している教育上の困難についてである。特に授業中の逸脱行動に着目したい。「逸脱」とは、「最も広い意味では、それぞれの社会や集団で分有されている社会規範に反する現象のことをいう。それが社会規範に反する行動ならば逸脱行動」(『新教育社会学辞典』)となる。本稿では、「大学の授業は学びのために存在する」という前提に立ち、授業中の逸脱行動を「自分や他者の学びを阻害する行動」と定義する。
 授業中の逸脱行動が問題になっているのは、なにもボーダーフリー大学に限ったことではない。実際、授業中の逸脱行動の様子について言及がなされている文献では、ボーダーフリー大学に話を限定していない場合の方が多いようである。しかし、筆者が2005年に行った質問紙調査では、例えば「私語」や「いねむり」などの逸脱行動は、中堅大学よりもボーダーフリー大学で多く行われていることが確認されている(詳細は、葛城(2007)を参照)。こうした知見からだけでも、ボーダーフリー大学がより多くの教育上の困難に直面していることがうかがえる。
 しかし、本稿では、ボーダーフリー大学に所属する学生(以下、ボーダーフリー大学生と表記)に対する自由記述式の調査を用いることによって、ボーダーフリー大学が直面している教育上の困難をより詳細に明らかにしたいと考える。具体的には、授業中の逸脱行動の実態だけでなく、逸脱行動に対する学生の捉え方や大学の授業に対する学生の期待も分析の視角としたい。そして、そこで得られた知見をふまえた上で、ボーダーフリー大学の主要な教育目的とは一体何なのか、それを獲得させるためにはどういった方法が考えられうるのか、といった点についての考察を行いたい。

著者
著者 葛城 浩一
著者(ヨミ) クズキ コウイチ
著者(別表記) KUZUKI Koichi
掲載誌
香川大学教育研究
9
開始ページ
89
終了ページ
103
出版者
香川大学大学教育開発センター
出版年月日
2012-3
ISSN
1349-0001
NCID
AA1197154X
資料タイプ
紀要論文
言語
日本語
出版社版
区分
香川大学
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