大学新入生の自律的進学動機が大学生活への適応に及ぼす影響

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Title
大学新入生の自律的進学動機が大学生活への適応に及ぼす影響
Title Alternative
Entering University: Student Motivation and Adjustment to School Life
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Description

問題と目的
 日本の大学進学率は1987年度に24.7%、1997年度に34.9%、2007年度に47.2%と年々上昇傾向にあり、大学はエリート教育の場から大衆化された教育の場へと変化してきた。このような現状を考えると、多様な学生が大学に入学してくるようになり、学生の大学への進学動機も多様になってきていると推察される(半津,2006)。こうした中で、学生の大学生活への適応の問題も多様になってきている(大久保,2004)ことからも、どのような動機で、大学へ進学したのかに焦点を当てて大学生活への適応の問題にアプローチする必要があると考えられる(半津,2002)。
 これまで、大学進学動機と大学生活への適応の関連を検討した研究は数多く行われてきた(例えば、安達,1999;磯部・上村,2007;松島・尾崎,2007;二宮・高橋・桑村・稲葉・山本・宮沢,2006;佐藤,2001)。そして、これらの先行研究から、積極的な動機で進学した学生は大学生活に適応しやすく、消極的な動機で進学した学生は大学生活に適応しにくいことが明らかになっている。
 しかし、これらの先行研究では、調査実施時点での進学動機が大学生活への適応と関連することが示されているが、調査実施時点での進学動機は想起された進学動機であり、大学生活に適応していく中で高校時代の進学動機や入学時の進学動機とは異なっている可能性がある。したがって、半津(2009)が指摘しているように、こうした進学動機の変化の可能性も考慮して、大学生活への適応の問題にアプローチする必要があるだろう。
 さて、本研究では動機づけ理論の中でも近年、注目されている自己決定理論に基づいて進学動機をとらえることとする。自己決定理論とは、Deci & Ryan (1985, 1991)の内発的動機づけに関する一連の研究をまとめたものである(Ryan & Deci. 2000) 0 Deci & Ryan (1985, 1991)は内発的動機づけと外発的動機づけは明確に分かれているものではなく、自己決定性(自律性)の程度によって区分できると主張している。そして、Ryan & Deci (2000)は、動機づけの中に調整スタイルという下位概念を想定し、より非自己決定的な調整スタイルから順に、外的調整、取り入れ的調整、同一化的調整、統合的調整、内発的調整と分類している。こうした自己決定理論から進学動機をとらえると、積極的な進学動機は自律性の高い動機と考えられ、消極的な進学動機は自律性の低い動機と考えられる。加えて、自己決定理論に基づいた研究では、自律的動機と適応の関連が示唆されており、(例えば、Kasser & Ryan, 1999;永作・新井,2005;Ryan. Rigby & King, 1993)、自律的動機に基づいて大学に進学した学生の方が大学生活への適応が高いと考えられている。本研究では、こうした自律的進学動機の測定については、永作・新井(2003)が作成した自律的高校進学動機尺度を一部改変したものを用いて行う。永作・新井(2003)の自律的高校進学動機尺度を改変して自律的進学動機の測定を行う理由は、自己決定理論を基に作成された尺度であり、永作・新井(2005)の研究で高校生を対象に進学動機と適応について縦断的な検討を行われているからである。
 一方、大学生活への適応は、適応状態に影響を与えると考えられる大学生活の要因と適応状態の指標である適応感に分けて測定を行う。大学生活の要因の測定については、大久保・青柳(2004)が作成した中高生用学校生活尺度、適応感の測定については大久保・青柳(2003)が作成した大学生用適応感尺度を用いて行う。大久保・青柳(2004)の中高生用学校生活尺度を用いて大学生活の要因の測定を行う理由は、大学生を対象とした磯部・上村(2007)の研究で用いられており、適応感との関連が明らかになっているからである。大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を用いて適応感の測定を行う理由は、個人と環境の関係の変化に伴い尺度の得点が変化すること(大久保・青柳. 2005a. b)が明らかになっているからである。また、本研究では、大学生活への適応を大学生活と適応感との関係からとらえるが、その理由は進学動機の違いによって、大学生活の要因が大学への適応感に与える影響の構造が異なると考えられるからである。本研究のように、進学動機の違いによってどのような大学生活の要因が適応感に影響を及ぼしているのかを検討することは、どの領域を大学側が支援や援助していくべきなのかについての一つの指針になると考えられる。
 以上を踏まえて、本研究では、大学生活への適応の問題と直面する大学新入生を対象とし、自律的進学動機と大学生活への適応との関連を縦断的に検討する。測定する二時点は、入学当初の4月と大学生活に慣れたと考えられる7月である。具体的には、まず、4月と7月において自律的進学動機と適応感がどのように変化し、関連するのかについて検討する。次に、自律的進学動機の得点から群分けを行い、群ごとに大学生活の要因と大学への適応感に違いがあるのかを検討する。最後に、群ごとに大学生活の要因が大学への適応感にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。

Author
著者 大久保 智生
著者(ヨミ) オオクボ トモオ
著者(別表記) OKUBO Tomoo
著者 川田 学
著者(ヨミ) カワタ マナブ
著者(別表記) KAWATA Manabu
著者 江村 早紀
著者(ヨミ) エムラ サキ
著者(別表記) EMURA Saki
著者 折田 祐希
著者(ヨミ) オリタ ユウキ
著者(別表記) ORITA Yuki
Publication Title
香川大学教育研究
Publication Title Alternative
JOURNAL OF HIGHER EDUCATION AND RESEARCH KAGAWA UNIVERSITY
Volume
7
Start Page
71
End Page
87
Publisher
香川大学大学教育開発センター
Publisher Aalternative
Center for Research and Educational Development in Higher Education, Kagawa University
Published Date
2010-3
ISSN
1349-0001
NCID
AA1197154X
Resource Type
Departmental Bulletin Paper
Language
jpn
Text Version
publisher
Set
香川大学
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